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――夢を見ていた気がする。
どんな内容だったかは覚えていない。
ただ汗でぐっしょりと濡れたパジャマと、頬にうっすらと残っている液体が流れた感触が、それが決して良い夢ではない事を伝えていた。
「……また、あの夢を見たのかな」
だるさが残る身体を起こしながら、夜中に目が覚める事がなくてよかった、とフラヴィは小さく安堵の息を漏らす。
今より幼い頃の、嫌な思い出。
一時期に比べたら見る頻度はかなり減ったものの、たまにこうして夢に出る事がある。
克服したつもりでも、心のどこかではまだ引きずっているのだろうか。
あるいは…。
ふとお腹に目を落とすと、眠りながら抱えていたうにゅうさぎが、腕の中で笑ってこちらを見上げていた。
その無邪気な表情に思わずくすっと笑ってしまい、ぎゅっとぬいぐるみを抱きしめる。
「ん、今日も頑張ろうっ」
気持ちを入れ替えるようにパチッ、と両頬を叩いて気合いを入れ、ベッドから勢いよく飛び起きる。
暗い気分を引きずっていても仕方がない。今日もお日さまのように明るく、元気に。
早くいつもの身支度を整えると、フラヴィは元気よく玄関を開けた。
「いってきまーす!」
今日は何が待っているだろう。どんな楽しい事があるだろう。
見上げると空に浮かぶ太陽が、今日も一日を祝福するかのように暖かく世界を輝かせていた。
「……あ!ご飯忘れてたの!」
どんな内容だったかは覚えていない。
ただ汗でぐっしょりと濡れたパジャマと、頬にうっすらと残っている液体が流れた感触が、それが決して良い夢ではない事を伝えていた。
「……また、あの夢を見たのかな」
だるさが残る身体を起こしながら、夜中に目が覚める事がなくてよかった、とフラヴィは小さく安堵の息を漏らす。
今より幼い頃の、嫌な思い出。
一時期に比べたら見る頻度はかなり減ったものの、たまにこうして夢に出る事がある。
克服したつもりでも、心のどこかではまだ引きずっているのだろうか。
あるいは…。
ふとお腹に目を落とすと、眠りながら抱えていたうにゅうさぎが、腕の中で笑ってこちらを見上げていた。
その無邪気な表情に思わずくすっと笑ってしまい、ぎゅっとぬいぐるみを抱きしめる。
「ん、今日も頑張ろうっ」
気持ちを入れ替えるようにパチッ、と両頬を叩いて気合いを入れ、ベッドから勢いよく飛び起きる。
暗い気分を引きずっていても仕方がない。今日もお日さまのように明るく、元気に。
早くいつもの身支度を整えると、フラヴィは元気よく玄関を開けた。
「いってきまーす!」
今日は何が待っているだろう。どんな楽しい事があるだろう。
見上げると空に浮かぶ太陽が、今日も一日を祝福するかのように暖かく世界を輝かせていた。
「……あ!ご飯忘れてたの!」
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エルフヘイムの戦いが終わってから数日。
運び屋のフラヴィにとっては、むしろここからの方が正念場だったかもしれない。
不足している物資の運送。復興の為の文書のやり取りの配達。依頼されれば、家族や友人の安否を直接訪ねて確認しに行ったりもする。
できる事はいくらでもある。いつもは道に迷ったり途中でお菓子を食べて休憩したりと、本来の能力未満の仕事しかしないフラヴィもしっかり働いて、その成果で勤め先の人達を驚かせた。
それと同時に、いつもは手を抜いていたという事もバレたわけだが……。
幸いお咎めは特になく、代わりにある程度復興が完了するまで真面目に働くという条件で許された。
年幼いという事で幾分少ない仕事量だったとはいえ、一応ノルマをこなしていた女の子を怒るのはあちらとしても気が引けたらしい。
ともあれ……戦いの被害は決して少なくはなかったものの、人々は再び未来の為に歩き始めていた。
そんな決して歩みを止めない人のたくましさを街のあちこちで見かける度に、フラヴィは少しだけ誇らしい気持ちになる。
私達はこの光景を、ここに住む人達を、確かに守る事ができたのだと。
運び屋のフラヴィにとっては、むしろここからの方が正念場だったかもしれない。
不足している物資の運送。復興の為の文書のやり取りの配達。依頼されれば、家族や友人の安否を直接訪ねて確認しに行ったりもする。
できる事はいくらでもある。いつもは道に迷ったり途中でお菓子を食べて休憩したりと、本来の能力未満の仕事しかしないフラヴィもしっかり働いて、その成果で勤め先の人達を驚かせた。
それと同時に、いつもは手を抜いていたという事もバレたわけだが……。
幸いお咎めは特になく、代わりにある程度復興が完了するまで真面目に働くという条件で許された。
年幼いという事で幾分少ない仕事量だったとはいえ、一応ノルマをこなしていた女の子を怒るのはあちらとしても気が引けたらしい。
ともあれ……戦いの被害は決して少なくはなかったものの、人々は再び未来の為に歩き始めていた。
そんな決して歩みを止めない人のたくましさを街のあちこちで見かける度に、フラヴィは少しだけ誇らしい気持ちになる。
私達はこの光景を、ここに住む人達を、確かに守る事ができたのだと。
街行く人々から見える終焉。
その光景はとても禍々しく、凄惨なもので――思わず震えてしまいそうになる。
こんな規模の大きい終焉を相手に、本当に自分は何かできるのだろうか?
そんな考えが胸をよぎり……しかしすぐに打ち消す。
どんなエンディングであろうと、それが悲劇であるなら変える。
それこそが自分がエンドブレイカーである事の証明であり……それを支えにする事で、今の自分はようやくここに立っているのだから。
その光景はとても禍々しく、凄惨なもので――思わず震えてしまいそうになる。
こんな規模の大きい終焉を相手に、本当に自分は何かできるのだろうか?
そんな考えが胸をよぎり……しかしすぐに打ち消す。
どんなエンディングであろうと、それが悲劇であるなら変える。
それこそが自分がエンドブレイカーである事の証明であり……それを支えにする事で、今の自分はようやくここに立っているのだから。
はあ、と吐いた息が視界を白く染める。
もうすぐ終わるとはいえ季節はまだまだ冬。外の風は冷たく、じっとしていると凍えてしまいそうな位だ。
けれども今、建物の壁に寄りかかる少女は不思議とあまり寒さを感じていなかった。
それはきっと今日この時の為に用意した、彼女なりの精一杯のお洒落な格好が温かく身を包んでいてくれるからだけではない。
傍らに置いた鞄からハート型のチョコレートの包みを取り出し、唇に触れさせる。
そして、それを渡す予定の相手を思い浮かべた。
ふわりとして温かい、見る者を安心させるような笑顔。まるで洗練された楽器のように澄んだ、耳に心地良い声音。
こうして思うだけで、胸の奥がほわっと不思議な温かさで包まれるのを感じる。
しかしそれと同時にまた、不安に思う気持ちまで出てきてしまった。
……あの人は喜んでくれるだろうか?
甘すぎたりしていないだろうか?
そもそも、来てくれるのだろうか?
勿論、この日に備えて納得が行くまで準備をしてきたつもりだ。
けれどいざ直前になると、そんな懸念が頭の中を巡って離れない。
大丈夫。ただチョコを渡すだけ。それだけの事なんだよ?
そう必死に自分に言い聞かせても、押し潰されそうな不安と緊張は一向に消えてくれない。
それどころか、時が経つに連れてどんどん大きくなっていくばかりだった。
いっその事、逃げ出してしまえたらどんなに楽だろう。そんな考えまでが心の片隅に芽生えてくる。
……でも、逃げるわけにはいかないの。
ぎゅっ、と少しだけ強くチョコレートを握る。
ここで逃げたらきっと自分は凄く後悔する。泣いてしまう。
そんなのは、絶対に嫌だから。
目を閉じて深く息を吸い込み、吐き出す。
深呼吸をして少しだけ落ち着いた少女は、小さく頷いて決意した。
もう迷ったりしない。想いを一杯に詰め込んだ贈り物で、この気持ちを届けよう。
――そう。あふれる程の大好きを、あなたに。
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この作品は、株式会社トミーウォーカーの運営する『エンドブレイカー!』の世界観を元に、
株式会社トミーウォーカーによって作成されたものです。
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